三軒茶屋 鍼灸 自律神経 東洋医学
自律神経について、前回は西洋医学面から解説しました。今回は東洋医学の視点から考えてみましょう。
自律神経は天候にも影響を受けることはお話ししました。現代のように気密性の高い住居や空調設備のない古代の生活においては、四季の変化は生命にかかわるものでした。変化への対応・順応は人間が生存するための大前提であり、すなわち当時の医学において重要な項目でした。中国最古の医学古典「黄帝内経」にも「四気調神大論」として一篇が設けられています。
さてこのタイトル「四気調神大論」ですが、「四季」ではなく「四気」であることにご注目ください。
四気とは何でしょうか?
四気とは、天地の間に生じたり消えたりする四時の気。
ちょっとわかりづらいですね。
では「気」とは何でしょう? 古代中国では目に見えないが何らかの「働き」があるものを「気」と言いました。たとえば「空気」。私たちは呼吸で酸素を取り入れて生きていますが、古代の人は「空の気」があるから生きていると考えていました。もともとは「気」という字は「氣」と書きます。「气」は雲を表し、そこに「米」を足すと「氣」になります。かまどで米を炊くときに出る湯気を由来とする説もあります。
同じように「天の気」により雨が降り、風が吹く、あるいは強い陽が射し暑い日が続く、これらはすべて天の気の働きによるので「天気」になるわけです。
いっぽう、「働き」が無いけれど目に見えてさわれる物を「形」と言っていました。たとえば石や岩は存在するが動きません。これは石や岩の中に「気」がないからです。「形」に「気」が宿ることで生命が生まれます。
つまり生物の生命活動が停止した状態は「形」であり、そこに「気」があるので生命活動を維持できると考えます。ミクロでは私たちや他の生物の生命活動、マクロでは天候や自然現象を「気」の「働き」と考えたのです。
春夏秋冬、四つの季節(四時)の変化に応じた気の働きがある。それが四気です。
春を例に挙げましょう。
春の温(生)春は暖かく、冬の間に眠っていた生命が目覚める時期です。けれども暖かさの中にまだ冬の寒さが残っています。そのため春の天気は不意に寒くなったり、嵐が起きたりと大きく変化します。これを陽中陰(暖の中にも寒がある)と言います。この変化に順応するのに大切なことは、自分を締め付けないことです。服装もゆったりとしたものを着て適度な運動をし、夜は少し遅く寝てもよいが朝は早く起きなさい、心の中の意欲は表へ出して行動するようにと、四気調神大論には生活習慣だけでなく心の持ちようについても書かれています。
夜臥早起 広歩於庭 被髮緩形 以使志生
生而勿殺 予而勿奪 賞而勿罰
此春氣之應 養生之道也
こうした四気のありように反する生活をしたり、異常気象などが起きると、今の言葉でいう自律神経のバランスが崩れ、さまざまな不調を招くよ、と古代にも戒められていたわけです。めまいの症状の訴えは春に増加するという統計もありますし、多くの人が悩む花粉症などのアレルギー症状、持病の悪化、精神的に不安定になりやすいなど、思い当たる点がある人もおられるのではないでしょうか。
現代の私たちは人工的な快適さの中で暮らしていますが、人間が自然環境の一部であることは古代と同じです。季節ごとの「気」の変化の流れに添う生活を心がける、古代人のような自然との調和を少し意識してみませんか?
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